EP3: 無念無情の"リタイア"
前回までのあらすじ
夜更かししたら体調悪くなった(当然のことである)。財布の中身が90円になった。
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バスは何事もなく昼食会場である長浜荘へ到着。
ここで僕らは刺身定食(希望すれば焼き魚定食)を食べることになっていた。刺身定食。なんとも食欲がそそられる。健康な状態であれば。
寝不足の中バスに揺られ続けた僕は健康な状態では済んでいなかった。バス酔いで吐き気が頂点へ達していた。もう食欲がないどころの騒ぎではない。
食卓に着くと、豪勢な刺身の盛り合わせ。
まぐろやサーモンは当然のことながら、サザエやその他名前のわからない貝と魚の数々……嗚呼、カムバックわが食欲。
とにかく手を付ける。一口ごとに幸せが訪れる。幸せが訪れながらも、一口ごとに地獄に叩き落される。おいしいんだけどそれはそれとして吐きそうだ。
もずくもおいしい。普段ならおいしく食べていたのだろうが、食欲不振+乗り物酔いの前にはかなわず一口であえなくギブアップ。
味噌汁だけは僕に優しかった。優しさゆえに最初に完食してしまい、後に残るは地獄のみ。
地獄に耐えながらも食べ続けたが、バスの出発の時間が近づいていたこともあり、刺身何枚かともずくを残して完食をあきらめた。ああ、なんとも縁起の悪いこと……
これはちょっとメンタルに響いた。だからどうなったということもないが。
昼食の後はバスに揺られてスタート会場である佐和田へ。バスを降りて、バイク預けにもっていくために輪行していたバイクを組み立てる。フロントハイドレーション(DHバーにつけるボトル)にはタブレットを入れておいた。
バイクジャージ、サングラスやシューズなどレースで使うものはトランジションバッグにしまって1人にひとつずつ貰える黄色いカゴへ。
このとき初めてDHバーの取り付けを自分でやったのだが、これがなかなかうまくいかない。結局、バイクを預けてバスに戻ってくる頃には出発の時間ギリギリになっていた。
バスはここからホテルに直帰する便とコースの一部下見(終盤の"小木の坂"のあたり)をしてからホテルに戻る便の二台があり、当初の予定ではコースの下見をするほうに行く予定だったのだがもう体調も限界だったこともありホテルに直帰するほうへ。
🐊君はコース下見便に乗るのでここで別れた。後で"小木の坂"はどうだったか尋ねてみたが、「まあまあまあ」みたいなよくわからない返事しか返ってこなかった(気がする。いずれにせよあんまりちゃんと記憶していない)
ホテルのフロントの人にATMがないか尋ねてみたところ、ホテルの目の前の建物(JA)にJAバンクがあった。手数料は痛いが、致し方ない。お金をおろした後昨日もいったの酒屋に寄り道して栄養ドリンクやらお菓子やらを購入。
まだ夕方4時ぐらいだが、早めのお風呂へ(占有できるかと思ったがなんだかんだで三人ぐらいはいた)。
部屋へ戻ってクエン酸を試してみようと突然思い立った。紙コップに水を入れてクエン酸を適当に投入し、コップを揺らして混ぜる。
クエン酸、効クゥーッ
— هرد رو (@8otemoto21) August 31, 2019
ずいぶんとまあ楽しそうである。この後クエン酸の分量を間違えていたことに気づいた(コップ一杯の水に対して1リットルに溶かすクエン酸を入れていた)が、別に大したことはないだろうと高をくくっていた。
30分もしないうちに、お腹がピーピーするタイプの猛烈な腹痛に襲われた。慌てて(一階ロビーの)トイレへ駆け込む。案の定、お腹がピーピーするタイプの"ビッグ・ベン"だ(こんな言い回しをしてイングランド人に殺されたりしないだろうか)。
レース前日にお腹ピーピーとは、なんともツイていない。原因は何か。最初に思い当たるのは昼食の刺身だが、あれが原因ならば今頃ここのトイレは超満員になっているだろう。
これは完全に余談だが、一年前のこの時期(九月の頭ぐらい)も強烈な腹痛に悩まされていた。その時は食中毒が原因だった(鳥刺しを食べていた)のでまず刺身を疑うのは妥当ではなかろうか。
そのときの鳥刺し盛り合わせがコレなのだが、今思うとよくこんなの食ったな。
それから、疑わしいのはクエン酸。便座の上で検索をかけてみると、案の定「クエン酸が胃腸の働きを過剰に活発化させることで下痢を引き起こす」みたいなことが書いてあった。そんな働きしなくていいから……
寝不足で胃が荒れているときはクエン酸の摂取は避けたほうが良い。そんな教訓、多分この後の人生の中で活きることはないだろう。
結局この腹痛はレース当日どころか東京に戻ってからも続き、なんだかんだで一週間近く付き合う羽目になるのである。
ひとまず腹痛は収まったが、その後も部屋と一階ロビー(のトイレ)を行ったり来たりすることになっていた。
夕食はなんだかんだで食べられた。
🐊君が味噌汁のカニがいらないというのでこっちによこしてきたため、カニ倍量でハッピー。代わりにカツを一個あげた。食後のアイスも無事に食べられた(お腹を下しているのだからどう考えてもアイスなど食べないほうが正解である)。
腹痛の不安は残るが、とにかくあとはレースに備えて寝るのみである。午前3時(厳密には3時15分)に起床予定のため、ベッドがあるのに雑魚寝(眠りを浅くして確実に起きる作戦)をすることにした。
3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時3時
— هرد رو (@8otemoto21) August 31, 2019
ツイートからも「3時に起きる」という意思があふれているではないか。見返したときちょっとビビった。
9時ぐらいには消灯。夜中まどろみの中でベッドに這い上がっていた(記憶はあるのだが、何を思ってそうしたのかは一切思い出せない)。
つづく