EP4: 決戦の朝 薬を手に入れろ!
前回までのあらすじ
クエン酸でお腹ピーピー。
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予定通りに起床。ベッドの下で寝ていたはずなのに目が覚めたらベッドの上なので一瞬ビビるが、すぐに這い上がった記憶がよみがえってきた。
すぐに一階のトイレへダッシュ。朝起きたらお腹も治ってるのでは、という淡い期待があったが望みは一瞬で砕かれた。
お腹ピーピーしすぎたせいで時間が無くなり、朝ご飯もリタイア。
米とみそ汁しか食べられなかった。縁起が悪い以前にどう考えてもエネルギー不足では? という不安もあるが、食べられないものはどうしようもない。スイム中に気分悪くなるよりはマシである。
トライスーツは昨日の夜の段階から着ているので上からシャツと短パンを着るだけである。これが楽なのだが、いまだに理解者はいない。
スイム用具をリュックに詰めて、いざバスへ......といきたいところだったが、バイクグローブが見当たらない。探していたら結局ギリギリになってしまった(バイクグローブは家にあった)。
佐和田についたら、本部でボディマーキングを受ける。本部には救護エリアが併設されていたのだが、ここで胃薬か何かもらえるのでは? と踏んでいた。
手荷物を預けに行く🐊君と別れ、救護エリアへ向かう。
手荷物預かりはなんと500円も取られるということで、こんなところでお金を使いたくなかった僕は手荷物はトランジションのカゴの中に入れていた。
救護エリアのスタッフの方に、お腹を下してしまったので何か薬をもらえないかと尋ねたところ胃薬をもらえた。
緊張ですかねーハハハありがとうございましたなんて言いながら薬を服用。後は効いてくれることを祈るのみ。
補給食をバイクにセットし、ボトルに水を入れてる。トイレに行きたかったがしばらく並んでも列が動く気配がなく、入水チェック締め切りに間に合わなさそうだったのであきらめて列を離れてスイムスタートエリアに向かいながらウェットスーツを着る。
僕のウェットスーツは一般的なものと異なり、背面のチャックを上から下におろす。
そのため一人では着られないので、毎度のごとくスタッフの方の助けを得ながらの着用である。着るのが大変な代わりに、脱ぐときは楽なのだが......
首元のマジックテープの位置も念入りに確認する。これを忘れてマジックテープの固い方の部分が微妙に襟元を越えてはみ出して、スイムの間ずっと首をひっかき続けて擦り傷の最終形態みたいなことになり、レース後数日間痛すぎて泣いたことは数知れずである。それが4㎞の長丁場で起これば目も当てられない。
アンクルバンドを受け取りいざ試泳へ。水温は朝の段階で24℃ぐらいだったと思う。
直近のレースは6月末の那須塩原の関東学生選手権(オリンピック・ディスタンス)だったのだが、その時の水温は18℃ぐらいで、スイムだけで10名近いリタイアが出るような始末であった。
僕自身も700mを過ぎるぐらいまで息継ぎが全然できず、おまけに両足が終盤で攣るという失態を犯した(その後なんとか完走はしたが......)地獄のスイムだった。
そのコキュートスに比べれば24℃などお湯みたいなものである。でもやっぱり最初の一瞬は冷たかった。
ところで、佐渡トライアスロンのスイムは水がきれいだという前情報があった。ので、それは僕もだいぶ期待するところであった。
先述の関東学生選手権以外に僕が普段出場する大会(とはいっても他には群馬県・渡良瀬遊水池で開催される学生大会ぐらいものである)はだいたい水が汚いのである。
去年出場した九十九里トライアスロンもこれまた汚水だった(渡良瀬よりはマシ)。
何しろ4㎞のスイムである。これで水が汚かったらやってられねーわ。そんなことを考えながら入水。
普通に汚かった。伸ばした腕の指先ぐらいまでは見える。九十九里の時と変わらないぐらいである。
がっかり。何日か前まで雨が降っていたので、おそらくそれが原因だろう。
そして昨日の地獄(昼食)の際に、試泳をしたという人から事前に情報を得てはいたのだが波がそれなりに大きい。
帰りの900mは追い波なので楽でいいだろうが、行きの900mはきつそうだなアなんて思ってるうちに試泳の時間が終わり、選手たちが続々浜へ上がり始めた。
浜に上がるまでにはごろついた石が多く、わりと痛かった。スタート前に🐊君と合流できるかと思っていたが、さすがに1000人もいる中から一人を見つけ出すのは至難の業である。あきらめて後ろのほうへ。
頭の中では『ソウルをひとつに』がヘビーローテーション。俄然気合が入る。スタート前の挨拶を聞き流しているうちにスタート1分前。
腹痛は来ていないが、少し尿意。一週目と二週目の間にトイレに寄れそうな雰囲気ではないのであきらめるしかない。
スイムコースは沖に向かって900m泳ぎ、そこから浜と平行に200m、そして浜へ戻る900mで1周が2000mになる。陸上の区間はほとんどない(「はじめに」を参照)。エイドらしきものが見当たらないが、水分補給もできないのだろうか。
そんな不安をよそに、いつも聞くのとちょっと違う「ポワァーン」みたいな感じの音が鳴り響く。ついに佐渡国際トライアスロン、236㎞の長丁場が幕を開けた。
つづく