僕が宇宙人になるまで / 2019 第31回佐渡国際トライアスロンAタイプ“感想”記

2019年9月1日に開催された佐渡国際トライアスロンAタイプの出場と完走の記憶です

EP5: スイム 鉄人たちの"戦い"

前回までのあらすじ

胃薬をもらえてハッピー。そんなこんなで午前6時スイムスタート。

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佐渡国トライアスロンのスイムは、浜辺からのスタートである。僕はトライアスロン歴は今年で3年目なのだが、実は今までフローティングスタート(水中で待機してスタート)しか経験がなかった。

なので今回、浜からのスイムスタートを想定して付け焼刃ではあるがドルフィニングを練習してきていた。

さあ今こそ練習の成果を見せるとき。前を歩く人に続いて一歩ずつ入水していく。ごろついた石ゾーンを足裏の痛みに悶えながら越えると、だんだん水位が深くなりはじめる。

つま先から脛、膝、太もも、腰......ん?

おかしい。だいぶ体も水に浸かってきたというのに、周囲の誰一人として飛び込みを始めない。

1000人の大集団が、ぞろぞろと歩いて海へ入っていくばかり。だいぶ人数が多いがエアロスミスの名曲『I Don't Want To Miss A Thing』が聞こえてこんばかりの雰囲気である。

 I Don't Want to Miss a Thing

 

I Don't Want to Miss a Thing

  • provided courtesy of iTunes

 

冷静に考えたら、1000人も入水するのにドルフィニングなどできるわけがないのは当然である。僕がここ1ヶ月やっていたプールサイドをビシャビシャにする練習は全くの無駄であった。

とにかく気分はハリー・スタンバーで(それにしてはだいぶ後方にいるのだが)歩いているうち、胸のあたりまで水が来る頃に周りが泳ぎ始めたので僕もストリームラインで飛び出した。

ここからが本当の意味でのスイムスタートである。

 

やったことがある人はわかるだろうが、トライアスロンのスイム(というかオープンウォーターのレース全般?)は"戦い"である。自分との戦いとかそういう話ではない。

"バトル"と形容されるように、特にスタート直後は団子状態が形成されやすく、乗って乗られて蹴って蹴られて場合によっては引っ張られてと、他のプレイヤーとの闘いになってしまうのである(故意のラフプレーというわけではなく、多くの場合は不可抗力なのである)。
普段のレースは人数もそこまで多くならないので、少し我慢すれば団子がばらけてこの"バトル"は終わりを告げるのだが、佐渡のスイムは一味違った。

なにしろ、1000人という大人数。それに加えて、若干コースが狭い。いつまでたっても団子がばらけない。

なんとか間を縫って前へ出ればまた団子。どこへ行っても"バトル"から逃れられない。まさに戦場である。

そしてこの戦場、わかってはいたが非常に波が高い。うっかり波の上で息継ぎをしようものなら、顔が海面に叩きつけられる。

そして、数百メートルもいかないうちに、首周りにこすれるような感触、やがて擦りむいたような痛みが。

そんなバカな。マジックテープの位置は入念に確認したはず。

泳ぎながら首の後ろに手をまわしてマジックテープを剥がして貼ってと繰り返すが、痛みは治まる気配がない。

どうやらこすれているのはマジックテープの部分ではなく、ウェットスーツの襟にあたるような部分のようだ。

今まではこんなことはなかったはずなんだけどなあ、と心の中でぼやきながら何度も襟を正す。

やってるうちに、突如背中に開放感が訪れた。ウェットスーツのファスナーが開いたのである。ここまで500m程度。

どちらにせよ、1週目が終わるまでは直しようがないので諦めて背中を開けたまま泳ぎ続ける。

幸いなことに、これによって首周りのこすれがだいぶマシになった。

大幅なコースアウトをしてライフセーバーに怒られたり(ごめんなさい)、斜めに戻ろうとして「一旦横に戻って」とまた怒られたり(ごめんなさい)、戻ったその勢いで他の選手の横っ腹に激突したり(ごめんなさい)しているうちに1週目が終わった。

折り返しの50-100mぐらい手前からは足がつくのでのそのそと浜へ上がる。完全に陸上の区間は短いが、ボランティアスタッフの方々がバケツに入った水を配っていた。柄杓で。

口の中が塩辛くてしょうがないので、真水はありがたい。一口飲むだけで口の中がだいぶすっきりした。あまりがっつり水分補給はできなかったがどうしようもないので2周目へ。

スタートと同じく、のそりのそりと入水。体が浸かってきたところで泳ぎだす。背中のファスナーは開けたままにしておくことにした。ストロークのたびにめくれて多少泳ぎにくいが、後で痛いよりはマシである。

このあたりから余裕が出てきて脳内オーディオも機能し始めた。思ったより疲労感もない。

2周目で泳ぎ始めてから300mもいかないうちにコースロープに顔面から突っ込んで口と鼻の間のところを怪我して泣きそうになりながら、萎えながらも2周目(タイムが落ちた)が終わってスイムアップ。

会場に設置してあった時計では7時41分。ペースは上々である。

そのまま陸へ上がり、ウェットを脱ぎつつシャワー(学校のプールにあるようなやつ)を浴びてトランジへ入る。エイドのアクエリアスで水分補給も怠らない。

スイムラップは1:42:38。571位での通過である。

パッド付インナーをトライスーツの上から履き、さらにバイクジャージ上下を着用。

トライスーツ+インナー+バイクジャージ下で脅威のパッド三枚構成である

これによって結果的に尻の痛みはほとんど出なかったが、終わるころにはものすごい蒸れとこすれで太もも付け根のあたりの皮膚がボロボロになっていた。あと股関節の動きも阻害されていたと思う。

若干頭痛があったが、とにかく7時50分バイクスタート。目標より10分ほど早い。

トランジの時にトイレに行きたかったが、なんだかんだでタイミングを逃した。

 

つづく